早見あかりが、ももいろクローバーを脱退した理由について(その4/終)
1号です。
MCが1時間続いても観客を立たせたままでいられるアイドル、ももいろクローバーZ が私は大好きです。
ももいろクローバーZのNHK紅白歌合戦出場を、微力ながら応援しています。
(ももクロ関連記事における1号は総じてキモいけどご容赦ください)
早見あかりがももいろクローバーと道を違えねばならなかった理由について、
・早見あかり本人の成長に伴う環境変化
・早見あかりに「アイドルに向いてない」と思わせたであろうきっかけ
を書いてきました。
最後は、早見あかりが抱えていた負担や重荷について書きたいと思います。
これも短くまとめると、
メンバーもスタッフも早見あかりに頼りすぎていた
その結果、負担が重くなりすぎて精神的にも追い込んでしまった
となるでしょうか。
「4.10中野サンプラザ大会 ももクロ春の一大事 〜眩しさの中に君がいた〜」第2部。
1号は幸運にも会場で見ることができました。
公演の最後、ももいろクローバーのメンバーそれぞれが想いをぶつけ合うMCパートがありました。
そこで1号は正直ドン引きしました。
「この娘、こんなことまでやってたのかよオイ……」
そう思うことが多々あったのです。
佐々木「〜あかりんは一緒にももクロに入って、最初の方はホントにずっと(当時は小学生だった)あーりんのお世話をいつもあかりんがしてくれてて〜」
高城「〜でも悩み事とかも切り出せない時も、あかりんがすぐ気づいてくれたりして、さりげなく助け舟を出してくれたりしてて、すごいうれしくて、私にとってあかりんは強くてももクロのお父さん的な存在で、頼れるなって〜」早見「〜れにはすごい明るく面白い子に見えるけど、すごい、なんか、なんていうんだろう。ガラスのハートの持ち主だと思うの。だから、私が守ってやる。」
早見「〜正直、私がいなくなって一番心配なのは夏菜子です。いつも写真を撮る時でも、必ず後ろに下がりたがるんです、夏菜子は。ちょっと一歩下がりたがるの。だから後ろからそっとこうやってね背中を押すの。すっごいいやがるけどそれをやってかなきゃいけないってことも自分でわかってるけど、でもそれができないのが、うちの優しいリーダーの百田夏菜子で、だから、ちょっと強くわたしが背中を押してあげたりとかしてたんですけど、それがなくなったらどうなっちゃうのかなあって、あかりがいなくなったら夏菜子潰れちゃんじゃないかなってすごく考えたし〜」
早見あかりはももいろクローバーの活動中、他の5人のメンバーにとって、
時には擬似的な恋人として、
時にはママ代わりとして、
時には父親的な存在として、
寄り添ってあげたり、面倒を見たり、守ってあげたりしていたのでした。
特に百田夏菜子との関係は彼氏彼女そのものにすら見えます。
オマエラモウツキアッチャエヨ!*1
その役割は「サブリーダー」のそれを大きく超えていたように思います。
また、早見あかりはももいろクローバーのMC担当でもありました。
円滑に進行を行い、他のメンバーへ話題を振って会場が盛り上がるようなコメントを引き出し、話が脱線しすぎたら元に戻す。さらに他のグループや総合司会のような「外部」の人がいる際は、さながら他の5人と外部の人を繋ぐ翻訳機として活躍しました。
そのお陰で他の5人は歌やダンスに集中できたり素のコメントができたりする一方、どこか無責任になっていた面もあったと思います。
あえて、意地悪な書き方をするならば
「ま、私がテキトーでもあかりんがうまくやってくれるでしょ」
という気持ちが無かったとは言えません。
奇しくも中野サンプラザ大会の第1部、ソロパート前のMCでもこんなくだりがありました。
百田「MCふたり(早見あかり&佐々木彩夏*2)に挟まれてるからすごいなんか、なんでも言っていいやっていう感じだったの。なんか、何とかなるかなって感じだったんだよ」
百田夏菜子に限らず、他のメンバーも公演中こんな感じで早見あかり任せになる場面が多々あったことは想像に難くありません*3。
さらに、早見あかり任せはメンバーだけではありませんでした。
「4.10中野サンプラザ大会 ももクロ春の一大事 〜眩しさの中に君がいた〜」ライブDVDの特典映像として、終演後の舞台裏の様子が収録されています。そこで「ももいろクローバーZ」への改名を知らされていなかったメンバーのやりとりが、だいたいこんな感じで映っています。
佐々木「あかりん(Zへの改名のことも)知ってんでしょ?」
有安「知ってるの?」
高城「知ってるの?」
早見「知ってるわけないじゃん!」
百田「今日は知らないの? 今日はホントに知らない?」
早見「知らない知らない知らない」
玉井「いっつも知ってるのにぃ」
ももいろクローバーの奇抜な企画の中には、早見あかり発案のものがたくさんあるそうです。
スタッフもまた、しっかり者の彼女へアシスタントプロデューサー的な役割を任せてしまっていたのではないでしょうか。
●でも
でも、これだけ周りを気遣い、ももいろクローバーを支えてきた早見あかりの活躍は、あまり気付かれず相応に労われることもなかった。
1号を含むファンもまた彼女の「ありがたみ」を正当に評価していなかったように思います*4。
「ももいろクローバーのために頑張っている自負がある。自分を美人だと言ってくれる人もたくさんいる。
でも、自分だけは“アイドルっぽい”他の女の子たちみたいには愛されていない。
髪を切ってみたり、色々と頑張ってみたけど結果はあまり変わらなかった。」
そんな早見あかりの心中はいかばかりのものだったのでしょう。
1号は、ここで「産後うつ」のことを連想しました。
出産後、夫や実家や地域のサポートを十分に受けられずに孤立無縁な状態で過大な労力がかかる子育てを続ける母親が、その負担を支えきれずうつ病になってしまうというやつです。
大抵の場合、母親がうつになって初めて夫は自分が妻や子育てに対して自分がいかに丸投げだったかに気付きます(もっと酷い場合には自分に責任の一端があることにすら気が付かなかったりします)。
早見あかりとは年も性別も違う1号には、彼女の心中を正しく把握することはかないません。
でも、脱退を決意する前後の彼女は産後うつになりかけの母親のような状態にあったのではと思ったりもします。
もし「自分がいなくなったら夏菜子が潰れちゃうから」という理由で早見あかりが脱退を思いとどまっていたとしたら。
ももいろクローバーのため、我々ファンのために頑張り続けてしまったとしたら。
彼女の方が潰れてしまったかもしれない、1号はそんな事を想像してしまいます。
結果として、早見あかりはももいろクローバーを脱退すると決断しました。
うつの効果的な予防策は心的負荷の原因から距離を置くことなのですが、真面目で責任感の強い人ほどこれが難しかったりします。
早見あかりの脱退という決断は、ももいろクローバーに残る事よりもずっと勇気の要る選択だったと1号は思います。
彼女が潤んだ瞳で「脱退したい」と告げた時、
他のメンバーも、おそらくスタッフも、そして我々ファンも、
彼女の抱えていた葛藤とそれに対する自分たちの無関心を悟ったのでした。
早見あかりが「ももいろクローバー随一のしっかり者」である前に、まだ10代の多感で傷つきやすい少女であることを、我々はつい失念していたように思います。
彼女がももいろクローバーとして活動したのは13歳から16歳まで。自分がその年頃に何をしていたかを顧みるたび、1号は何ともいえない気持ちになります。
●まとめ〜ぼくたちが中野サンプラザで“伝えたかったこと”〜
以上、早見あかりが脱退を発表した2011年1月16日から、中野サンプラザ公演当日の2011年4月10日まで、東日本大震災を挟みつつ、ファンの間でなんとなく共有されていた雰囲気を1号なりにまとめてみました。
「彼女を引き留めたい。でも、彼女のためには引き留めるわけにはいかない」
早見あかりを大切に想う人であれば、この結論にたどり着かざるを得なかったのだと1号は思っています。
1号が、早見あかり脱退について非モノノフ向けに説明する際にするたとえ話があります。
もし、大好きな恋人がいたとして。
その人に泣きながら「あなたの事は今でも好きだけど、これ以上あなたといるとわたしは壊れてしまうから別れたい」と言われたとして。
やり直そうにも、もうどうにもならないくらいに手遅れで。
さらに、その人は夢を叶えるために留学を控えていたとしたら。
その人と、4月10日に最後のデートをして別れることになったとしたら。
精一杯の感謝を伝えたいですよね?
あなたはこんなにも愛されていたと分かって欲しいですよね?
一生忘れられない日にしてあげたいと思いますよね?
あの日、中野サンプラザに集まった人たちの多くが感じていたのは、こんな感情だったと思います*5。
「4.10中野サンプラザ大会 ももクロ春の一大事 〜眩しさの中に君がいた〜」第2部、「あかりんへ送る歌」の歌い出しに合わせて会場を埋めた青い光を彼女へ見せることができて、恥ずかしながら本当に良かったと思わずにはいられませんでした。
(サイリウムにはどうも抵抗感があった1号も青いサイリウムを持参して会場へ赴いたものの、いざ入場列に並んでみたら有志の方が観客全員分を配ってました)
あの日。
開演ギリギリまでチケットを求めて立っていたファンがいました。
会場に入れなくても、終演までずっと外で待っていたファンもいました。
そして、舞台上にはファンとメンバーを大好きと語ってくれた早見あかりがいました。
それを「早見あかりは女優志望だったので、ももいろクローバーの活動も嫌々やっていたけど我慢できずに脱退した」みたいにまとめられてしまうことにどうにも耐えられなかったのでこんな長文を書いてしまいましたが、1号が現場で肌感覚として感じていた雰囲気や解釈はこのようなものでした。
これが正解と言うつもりもありませんが、随分と不本意な説明のされ方をしている場合が多かったので文字にまとめて置いておくことにします。
別に早見あかりのことを知らなくても今のももいろクローバーZを応援することができますが、もし「4.10中野サンプラザ大会 ももクロ春の一大事 〜眩しさの中に君がいた〜」のDVDを観るのであれば、知っておいた方が感動できるよと1号は思うのでありました。
【早見あかりが、ももいろクローバーを脱退した理由について・目次】
第1回(概略)
第2回(「女優志望」の実情)
第3回(アイドルに向いてない発言の背景)
第4回(過大な負担・中野サンプラザ公演前の雰囲気)
(2011/11/24追記)
ネタがたまったので後日談的な内容の第5回を書きました。
第5回(後日談ほか)
*1:この一文、書いてから以前ジャニーズ系のファンブログで見かけたことがあるのを思い出しました。彼女たちはこんな気持だったか……
*3:早見あかりの脱退によって残る5人の自立心が育ち、本格的なブレイクを後押ししたのは皮肉な結果だなあと思います。
*4:前回の記事で触れた『水曜JUNK 山里亮太の不毛な議論』(TBSラジオ)でもこの事が語られています
*5:中野サンプラザ公演直前の『水曜JUNK 山里亮太の不毛な議論』(TBSラジオ)で「早見あかりへのメッセージ」を留守電メッセージの要領でファンが吹き込めるようにして、まとめた音源を早見あかり本人へ渡すという企画が行われました。バックナンバーを聴けば、その一端を垣間見ることができます。