劇団ナカゴー第九回本公演『ダッチプロセス』
1号です。
ちょっとももいろクローバーのエントリを書き過ぎたので、最近観たもののレビューを久しぶりに書きます。
劇団ナカゴー『ダッチプロセス』
会場:王子小劇場/期間:2011年10月21日〜30日/作・演出:鎌田順也
ナカゴー公式ホームページ
週末ということもあり100名弱のキャパの王子小劇場はほぼ満席、近いうちに下北沢にある劇場も満席にできそうな勢いでした。
導入はこんな感じ。
「荒川車庫前にあるモスバーガー。そこの名物店長が、突然巨大なハンバーガーになってしまった!?」
……いや、幕が開くとバーガーショップのセットに幅・奥行・高さが約1mくらいあるフェルトで作ったっぽいハンバーガーが鎮座してるんですよ。(現在ホームページには公演のスチール写真が載っているので観てみてください)
こうしてカフカの『変身』もびっくりの不条理劇が始まります。
作・演出の鎌田順也が凄いのは、
という無理ゲーを成功・成立させている点に集約されます。
自分が上記の制約を満たす演劇脚本を作れと言われた時、どうするか想像してみてください。
…
………
……………
1号は途方に暮れます(というか普通は無理です)。
モハメド=アリ似の店長が巨大ハンバーガーの中から復活→澤穂希似の店長妻号泣(ついでに愛人だった女子店員も号泣)→店長が紛れ込んだハンバーガーの国では正義のハンバーガー軍団と悪のハンバーガー軍団の戦争→店長がハンバーガーを人間が“食い物”にしているとバラしてしまったことで怒れる悪のハンバーガー軍団が人間界へ攻めてくることに→巨大ハンバーガーから悪のハンバーガー(なぜかマクドナルド製)が次々にやってくる→出演者が寄ってたかって踏みつける*2
と、テンポ良く話がまわる様は痛快でした。
舞台上のテンションは常に高く、ギャグのキレも良くて会場からも頻繁に笑いが漏れていました。
正直、どうやってオチを付けるんだろうと不思議に思いながら観ていた1号でしたが、こんな感じに。
「正義のハンバーガー軍団の力が乗り移った出演者の1人(常連客家族の母親)が、近所のドムドムバーガーへ行けば万事解決するらしい。しかし、当の母親は激しい戦いでPDSDにかかり外へ踏み出すことができなくなってしまう……」
最後の30分以上は“彼女をいかに立ち上がらせるか”を中心に回る構成になりました。
「死にたくない」という思いから外へ踏み出せない極端な状態から、生への執着を捨てることで今度は外へ踏み出す理由を失う極端な状態へ移り変わる。最終的には俗っぽい欲求の力を借りて両極端な状態を“中和”させて、彼女は外へ踏み出す(そして終幕)。
なんとなく1号が思ったのは、奇抜な舞台設定は客寄せのためのものであって演出家の書きたいテーマはこちらなのかなということでした。
公演タイトルが「アルカリで中和を行いながらココアパウダーを作る製法」を言う『ダッチプロセス』になっているのもその証左でしょう。
ダッチプロセスとは(Wikipedia「ココアパウダー」の項)
鎌田順也は、自分の抱える1つのテーマを形を変えながら表現し続けるタイプの作家なのかもしれません。1号は今回がナカゴー初見だったので今後どのような展開を見せるのか注目したいと思います。