『THE LAST -NARUTO THE MOVIE-』(2014年,日本)/人気作品ゆえの不幸
1号です。
『THE LAST -NARUTO THE MOVIE-』を(ももクロLVのついでに)観てきました。
『THE LAST -NARUTO THE MOVIE-』
監督:小林常夫/原作・キャラクターデザイン・ストーリー総監修:岸本斉史<あらすじ>
すべての忍を巻き込んだ第四次忍界大戦の終結から2年――木の葉隠れの里へ戻ったナルトは大戦の英雄として人気者になっていた。子供の頃からナルトを慕っていた少女・ヒナタは、そんな人気者になってしまったナルトになかなか想いを告げられずにいた。
そんな中、月が地球に接近してきていることが判明する。地球の危機を救うため任務へ向かうナルトとヒナタたち。しかし、ヒナタを狙う謎の敵が現れて……
コミックス完結記念作という位置づけでもあり期待していました。
結論から書けば、とても不出来な作品と言わざるを得ません。
特にまずかったのは脚本。でも不出来の原因は脚本担当者ではなく、本作の「座組」そのものだと感じました。
つまり、本作の中で描くべき要素が多すぎた。これに尽きると思います。
まず、本劇場版はコミックス699話(本編最終話であり、ナルトとサスケのラストバトル決着編)と700話(699話の数年後を描いたエピローグ。ナルトはヒナタと結婚して既に2児の父となっている)の間をつなぐお話であり、699話の2年後を描いたストーリーになっています。
『NARUTO』原作側から本劇場版への要請は、「ナルトとヒナタが結ばれた経緯を描いてほしい」というもの。
原作者みずからストーリー監修に入っているのも、ジャンプ映画でよくあるパラレルワールド的なエピソードではなく、『NARUTO』本編の公式ストーリーを描くという意志のあらわれです。
つまりストーリーの骨子は、男女が出会い→恋をして→結ばれるという一連の流れが必要になります。
一方で、本劇場版は少年ジャンプの看板バトル漫画の映画化作品でもあります。そこに求められるのは、強敵でありバトルです。もちろん興行的な成功も求められています。
つまりストーリーの骨子は、強敵(劇場オリジナル。主人公が苦戦できるくらい強い)登場→地球の危機→主人公の活躍で打倒という一連の流れになるはずです。
もともと映画というメディアには約2時間という時間的制約があり、思いのほか詰め込める情報量が少ない特徴があります。複数のプロットを錯綜させるのは元々とても難しいのです。
本劇場版は、これに加えて「NARUTO信者(原作のコアファン層)」と「子ども(ライトユーザー層)」両方が楽しめる2正面作戦も強いられています。
「マフラー」というラブコメですら陳腐すぎて使われなくなったアイテムも、原作を隅から隅まで読んでいるわけでないライトユーザーにも感情移入しやすいようにという配慮から生まれたものなのだと思います。
マフラーが出てくるたび、NARUTOの世界観や世界滅亡の瀬戸際というシチュエーションから浮きまくっており、1号は個人的に大失敗だったと思っています。
さらに、数多いる人気キャラに出番と見せ場を用意してあげる必要もあります*1。
2時間の尺の中に詰め込むのはムリのある要請だったと言わざるを得ません。
脚本がコンテになる段階で相当量のエピソードがカットされているのでしょうね。唐突で分かりづらい繋ぎ方をしているシーンが散見されました。ネタバレにしかならないノベライズ版が劇場公開と同時に発売されたのも、劇場版の尺が足りないことと関係しているのかもしれません。
ともあれ、ナルト完結おめでとうございました。
連載末期にはグダグダ展開と批判されることもあったようですが、週刊少年ジャンプという過酷な環境で15年に及ぶ長期連載を全うして作者自身が思い描いていたラストエピソードまで描き切ることができたという事実はあまりに偉大です。
ナルトの息子を主人公にした新プロジェクトも今年動き出すと予告が出ていましたので、そちらも楽しみです。
*1:カカシやヒアシといったネットでも人気のネタキャラ達が期待通りの活躍をしていた点については、1号は大いに満足しました