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性表現は、なぜ規制できるのか?(1)

2号です。いちおう弁護士なので、法律に関係する記事を多めに書いていこうと思っています。
 
少し前に、東京都青少年健全育成条例の改正問題が話題になっていました。「非実在青少年」という分かるような分からないような概念を使っていたこともあり、強い反対の声が上がって結局否決されました。
たしかに、地上波のテレビを見ていると、エロい表現には相当厳しい規制がかかっています。エロだけでなく、流血など暴力的な表現も、ゴールデンタイムではまず見られません。こういう状況からすると、「非実在青少年」であっても規制されて当然、という発想も出てきても不思議ではないかもしれません。
ただ、テレビのこうした規制は、テレビ会社が設定した放送倫理に基づくもの、つまり自主規制です。自主的ではない規制、つまり公権力による規制を認めるとなると、それだけの必要性がきちんと備わっていないといけません。

表現規制の目的は?

規制の根拠として、「善良な性的道徳」を守る、という理由が挙げられることがあります。公権力は、モラルを守ることそのものを権限として持っているという発想です。しかし、これだと結局は多数派の価値観に合わないものを処罰できることになるので、いまではあまり支持されていません。
また、「不道徳な性表現に触れていると、触れた本人の自律的能力を破壊する」から、これを防ぐという目的が挙げられることがあります。覚せい剤の自己使用を犯罪として処罰することの目的にはこれが入っていますから、規制の目的としては一応理由にはなります。
問題は、「どういう性表現にどのくらい触れたら、どう自律が阻害されるのか」という点の立証が、覚せい剤みたいに医学的に明確にできたりはしないことです。ポルノを見たら性犯罪に走る、というような因果関係が存在しているなら規制できるかもしれませんが、今までのところ、信頼できる調査結果でそのような因果関係を証明したものはないみたいです。

ただ、性表現の規制根拠には、他にもたくさん挙げられており、規制肯定派の議論もそれなりに腰の据わったものではあります。


次は、他の規制根拠を詳しめに取り上げてみます。