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坂東眞理子『日本人の美質』/萌えアニメとBLに理解を示す懐の広さに感銘を受ける・・・

1号です。
『女性の品格』で有名な坂東眞理子の新刊が書店で平積みだったので読んでみました。

日本人の美質 (ベスト新書)

3・11後に「明るい未来を築くために日本人の美質をどう磨いていけばいいかを提案する一冊*1」ということですが、ハウツー本やライフハック本ではありません。むしろ東日本大震災後の日本を目の当たりにして著者が思ったこと感じたことを書き留めたエッセイに近い印象を受けました。

正直なところ著者の年齢や経歴から「わたしの若い頃は……」みたいな説教が多いのかと思っていたら、柔軟な感性と合理的な思考に基づいて書かれていたので驚きました。

特にひとりのオタクとして注目したのはこの一節。
クールジャパンを売りだせ的な話の中で、マサチューセッツ工科大学のメディア研究所が日本のオタク向けのマンガやアニメを研究対象にしていることに言及している箇所です。

(略)私は、なぜ一般の日本人が好きな主流の作品ではなく、私などが聞いたこともないような特別な人が好むオタク系の作品ばかり研究しているのかと彼らに尋ねました。特殊な作品を見て、それを基準に日本を誤解されては困ると思ったのです。
彼らは、「メジャーなマンガは西洋的な思想がミックスされていて日本らしくない」と言いました。いわく、少年愛を扱ったBL(ボーイズ・ラブ)系などアンダーグラウンドのマンガの方がキリスト教文化の中のタブーをやぶる日本独特の新しい文化を発信しているのだそうです。
私はテレビアニメの分野に疎いのですが、自分が価値を置いていない日本の文化分野が世界から評価されることがあるのだと教えられました。ポップカルチャーの世界には、そういうものがほかにもたくさん眠っているに違いありません。(略)

『日本の品格』p.112-113)

外国文化に接するのと同じように、オタクという国内の異文化にもフェアな視線を注ぎ「自分にはよくわからないが、こんなのでも好きな人がいるなら尊重しよう」というバランス感覚に1号は感銘を受けたのでした。

でもまあ、そういうアニメって実際には海外でマネタイズがうまくできなくて困ってるんですけどね!



とまあ、このトピックだけだとアレなので、他にも我が意を得たりと思ったトピックをいくつか。

年寄りは福島県産の食品を食べあげようぜ!

87ページ、被災地産の食品に対する風評被害について語っている箇所で「妊婦と子供は放射能に気を付けた方がいいけど、自分を含め50歳以上の人は神経質にならないで被災地の産業を助けてあげようよ」と書いてあります。
経口摂取で放射能の影響が出るのは数十年後と言われているので、先に寿命が来ちゃう人が食品の放射能に過敏になるのは馬鹿らしいというのは道理だと1号も思っていましたが紙メディアで書ける人はあまり多くない印象がありました。

ちゃんとエリート教育しょうぜ!

本書ではリーダーが頼りないのはエリート(=出る杭)育成を避ける風潮が日本にあるから、という論調が全編を通じて登場します。121ページでも「英語教育に本腰を入れよう」というトピックが立てられているのですが、そこで
「世界で通用するために英語を使いこなし、日本の良さ、強みを発信できる水準の人」
「一通り英語を使ってなんとか仕事や生活ができる人」
「まったく英語と関係のない人生を送る人」
に分けて考えようぜという話をしています。これも全くそのとおりで「(各人の必要性を勘案せずに)全員に同じ水準の英語を身につけさせよう」というのはナンセンスだと1号も思います。


もちろん「それはちょっとどうだろう」という箇所もありますが、坂東眞理子の地力を見た思いがした1号でした。

*1:カバーそで部分より抜粋